ネイチャーセンターには、色々な虫が入り込んできます。これらの虫は捕まえて外へ逃がすのですが、初めて見つけたものは標本にしています。館内に展示してあるハチやアブの標本は、殆どがこうして採集されたものです。
今日も園内で初めて見る昆虫を発見。ヨコヅナサシガメです。大きさは2センチ強。ネイチャーセンターの窓ガラスを這っていました。
よく見ると、なかなか個性的な姿をしています。薄っぺらいお腹の左右にはシマシマのフリル?が付いていて、なかなかかわいいですが、要注意!
名前に「サシガメ」とあるように、この虫は刺すカメムシです。肉食で、他の昆虫の体液を吸う獰猛な虫。不用意に触ると、強烈な一撃をもらうかもしれません。名前も強そうです。
この虫はサクラの幹によく付いていて、うろの中にびっしりと群れていることもあります。水鳥公園にはサクラはないけれど、どこからやってきたのかな?
皆さんのご近所でサクラが生えていたら、このユニークな虫に出会えるかもしれませんよ!
●鳥情報
シベリアオオハシシギは、5月11日を最後に姿を消しました。生まれ故郷を目指しての旅に出発したようです。新たな珍客の飛来に期待しましょう!
今日の鳥:2010年5月17日
カイツブリ、カワウ、ダイサギ、コサギ、アオサギ、マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモ、ミサゴ、トビ、コチドリ、ハマシギ、アオアシシギ、キアシシギ、イソシギ、セイタカシギ、キジ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、オオヨシキリ、セッカ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス
平成22年1月1日
生物多様性ってなんだ?
神谷要(中海水鳥国際交流基金財団)
生物多様性という言葉は、今年名古屋で「生物多様性条約」の締約国会議が開催されることもあり、注目度があがっています。また国連も、今年を国際生物多様性年と定め、様々な呼びかけを行っています。そういった中、米子水鳥公園には、ハクチヨウだけでなく、メダカや水草、タヌキなど様々な生き物が住んでおり、生物多様性を支える重要な場所の一つとなっています。しかし、「生物多様性条約」は、特に珍しい生き物のいる自然だけを守ろうとしているのではありません。いったい何を目指しているのでしょうか?
例えば、私たちが森に入ったとき、踏落ち葉を踏みしめる足下には、何匹の土壌微生物がいるかご存知でしょうか? ある調査ではワラジムシ、ヒメミミズ、ダニ、センチュウなど16万匹もの小さな動物がいたそうです。さらに細かな単細胞の生物まで加えれば数億匹とか・・・
「きもちわるい」と思ったあなた。実はこの顕微鏡でやっと見えるような生き物は、あなたの生活にとても役に立っています。例えば、彼らは農地で作物をつくるとき、堆肥を分解する欠かせない存在です。また、細菌類の納豆菌や乳酸菌そして酵母菌などは、人間の生活に有用なものです。我々の生活は、生物多様性の上に成り立っているのです。
また、人類は地球上の多様な生物群の中から、イネ、トマト、ジャガイモ、トウモロコシなど有用な食物種を選び出し、ペニシリンのような薬品を開発してきました。それでも人類はその生物資源のたった1%も利用できていないと言われています。
ところが、生物資源である生物多様性が毎年すごい勢いで減っています。現在、たった一年で4万種の生物種が減少し、外来の生物によって生態系がさらに単純化しているといわれています。
また、この人類共通の資源である生物資源が、農作物や医薬品の分野で特許を使って一部の大企業に独占されようとしています。古来よりわれわれの祖先が守り育ててきた自然や生き物たち、そしてその活用の方法を一部の人が独占してよいのでしょうか? 生物多様性条約は、このような問題に国際的に取り組もうという条約なのです。
米子水鳥公園ができて15年、中海がラムサール条約に登録されて5年がたちます。この自然を守ったことは、人類共通の大きな資源である生物多様性を守ったとも言えます。私たちは、この資源を未来へ残し、公平に分配する方法を考えなければいけないでしょう。
ですからもしあなたが、今年どこかで生物多様性という言葉をお聞きになったら、こう思ってください。目には見えなくても私たちの生活を支える大事な生き物たちのお話しであると。